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住む

東伊豆インタビュー栁瀬可奈子さん(前編)

荒武
荒武
柳瀬さん、本日はよろしくお願いします!地域おこし協力隊として2024年4月から東伊豆町で活動されていますが、まずはどのような経緯でこの町に来られたのか教えてください。

よろしくお願いします!私は兵庫県神戸市の出身で、大学では焼き物を専門に学んでいました。愛知県立芸術大学という、日本の中で唯一陶磁器に特化した専攻がある学校で学び、焼き物について深く勉強してきました。

大学では、基本的な陶磁器の制作技法を学ぶことから始まり、液状の粘土を石膏型に流し込んで作る工業的な生産手法や、伝統的な手作業での成形方法など、幅広い技法を身につけました。皿や花器、ティーポットなどの制作も行いましたが、次第に「陶芸を学ぶことそのもの」よりも、「陶芸がどのように社会とつながるのか」に関心を持つようになったんです。

柳瀬さん
柳瀬さん

荒武
荒武

陶芸の技術を習得するだけでなく、それがどんなふうに世の中で活かされるか、という視点に興味を持たれたんですね。

はい、そうですね。大学時代に取り組んでいた活動のひとつに、「陶磁棟へようこそ」というプロジェクトがありました。これは、私自身の大学受験時の経験がきっかけで始めたものなんです。

柳瀬さん
柳瀬さん

荒武
荒武

どんな活動だったんですか?

大学のキャンパスってすごく広いんですけど、陶磁専攻の建物がキャンパスの奥まった場所にあって、案内表示も少なかったんですよ。私は受験の時、その場所がわからなくて迷ってしまい、遅刻しそうになったことがありました。それで、「陶磁専攻のことをもっと知ってもらうにはどうしたらいいか」と考えて、自分なりに宣伝活動を始めました。

具体的には、毎日同じポーズをとって写真を撮り、それをSNSに投稿するというものです。何の変哲もない写真ですが、毎日続けることで「このポーズの人=陶磁棟の人」と認識されるようになり、次第に文化祭などで「あの同じポーズの人だ!」と声をかけられることも増えていきました。

柳瀬さん
柳瀬さん

荒武
荒武

それ、めちゃくちゃユニークですね!いわゆる「バズる」仕掛けを自然とやっていた感じですね。文化祭の時に「あの人だ!」って言われるの、すごく面白いし、印象に残ると思います。

そうですね(笑)。特に意識していたわけではないですが、続けることである種のブランドみたいなものができたのかもしれません。

柳瀬さん
柳瀬さん

荒武
荒武

でも、そんなふうに「陶磁棟の人」として認識されるようになったのに、卒業制作では一切焼き物を作らなかったんですよね? それはなぜですか?

単純に、卒業制作の1年間をかけて陶芸作品を作っても、それが仕事につながるイメージが持てなかったからです。陶芸家として独立するという選択肢もありましたが、それで生計を立てるのは簡単ではないと感じました。むしろ、焼き物の産地として有名な愛知県瀬戸市で「まちづくり」として関わる方が、自分のスキルを活かせるのではないかと考えたんです。

そこで始めたのが、「もちもちプロジェクト 瀬戸編」でした。

柳瀬さん
柳瀬さん

荒武
荒武

「もちもちプロジェクト」? なんだか気になる名前ですね!

「餅は餅屋に聞くのが一番いい」というコンセプトで、地元の専門家に話を聞く座談会を開くプロジェクトです。焼き物だけでなく、地域の産業や文化を学び、それを記録として残すことを目的としていました。地域の人の声を丁寧に拾い、それを本としてまとめることで、瀬戸市の歴史や文化を掘り下げる試みでした。

今日、その本を持ってきているので、あとで見てみてください。

柳瀬さん
柳瀬さん

 

荒武
荒武

これはすごく面白い取り組みですね!焼き物だけでなく、その背景にある地域文化に目を向けることで、焼き物がどんな歴史や環境の中で生まれてきたのかを知ることができる。それを記録に残すのも意義が深いですね。

ありがとうございます。やっているうちに、「陶芸という手法にこだわらなくても、文化を掘り下げることで地域とつながることができる」と実感しました。

柳瀬さん
柳瀬さん

荒武
荒武

その経験が、東伊豆町に移住するきっかけになったんですね?

はい、そうです。瀬戸市での経験を経て、「自分の学んできたことをもっと違うフィールドで活かせるのでは?」と考えるようになりました。

そんなときに、地域おこし協力隊の制度を知ったんです。最初は「まちづくり」と聞くと少しハードルが高いと感じたんですが、東伊豆町には「旧稲取幼稚園利活用事業」という取り組みがあって、ここなら自分のデザインやアートの視点を活かせるのではないかと思いました。

柳瀬さん
柳瀬さん

荒武
荒武

確かに、地域の遊休施設を活用するプロジェクトなら、柳瀬さんの経験がダイレクトに活かせそうですね。最初はどんなふうに関わり始めたんですか?

まずは「よりみち135」というプロジェクトに関わりました。これは旧稲取幼稚園の活用拠点で、地域の交流の場として機能させるためのものです。住民公募で「よりみち135」という名前が決まり、私はそこでイベントの企画やロゴデザインを担当しました。

柳瀬さん
柳瀬さん

最初はとにかく地域の人たちと接点を持つことを意識しましたね。

最初に取り組んだのが、利用案内の制作でした。ただのパンフレットではなく、「実用性を持たせることで長く手元に置いてもらう」という視点を重視しました。例えば、裏面には避難グッズの情報を掲載し、「非常時にも役立つから捨てないでね」と思ってもらえるような設計にしました。

それと並行して、「ブックイベント」という読書をテーマにした取り組みも始めました。本を媒介にして人が集まり、地域に根付く新しい文化を作る試みです。第1回目では、みんなで本棚を作ったり、絵本の読み聞かせを行ったりしました。

第2回目はクリスマスの時期に開催し、オーナメント作りを企画しました。こうしたイベントを通して、「ただの施設」ではなく、「何かを体験しに行きたくなる場所」にすることを目指しています。

柳瀬さん
柳瀬さん

荒武
荒武

すごく面白いですね!ただの施設を活用するだけじゃなくて、「ここに来る理由」をちゃんと作ることを大事にされているんですね。では、後編では協力隊での活動やこれからのよりみち135についてより深く聞かせてもらいたいと思います!