東伊豆町民インタビュー 土屋親史さん
今回は、普段あまり知る機会のない消防団の役割や、地域が抱える課題、これからの消防のあり方について団長の土屋さんにお話を伺いました。
土屋さん自己紹介をお願いいたします。
東伊豆町で生まれ育ち、今は大川で漁師をしています。
消防団には長年所属していて、令和6年4月1日から団長を拝命しております。
自己紹介ありがとうございます!
たくさんお聞きしたいことがあるのですが、、
まず初めに、地域における消防署と消防団の役割について教えてください。
消防署の職員は、専門的な知識を身につけ、日頃から訓練をして、火災や災害があればいち早く出動する、いわゆるプロです。 私たち消防団は、地域の住民でつくられている組織です。普段はそれぞれ仕事を持っていて、消防署のように24時間駐在しているわけではありません。いざというときに集まって、消防署を支える役割があります。
なるほど、地域に暮らしているからこそ、できることもあるのでしょうか。
ありますね。地域の人のことを知っているから、「あの人は大丈夫かな」「いつもいる人がいないな」と気づける。消防署の職員は人事異動などもありますから、地域の細かいところまでは把握しきれない部分があります。そこを消防団が補いながら、一緒にやっていくんです。 山林火災でも、応援に来た人が防火水槽の場所はわかっていても、山の中の水のことまでは地域の人しかわからない。そういうところでも役割があります。
役割を分けて考えるうえで、大切にしていることは何ですか。
一番は、団員の命です。私たちも訓練をして知識を身につけていますが、常に専門的な訓練をしている消防署の職員とは違います。基本的には職員に最前線を担ってもらい、団員にはむやみに前へ出ないよう伝えています。 ただ、地震や土砂崩れで道路が通れなくなると、その地域に消防署の人が入れないこともある。そうなれば、地域の分団が対応しなければなりません。そのためにも各地域に分団があるんです。
昔と比べて、消防団を取り巻く環境はどのように変わってきましたか。
やっぱり少子高齢化にともなう
団員不足ですね。若い人に入ってもらうのが難しくなっています。進学で首都圏へ出て、そのまま向こうで就職して、地元に戻ってこない人も増えています。 地域に若い人がいても、全員が入ってくれるわけではありません。本人の考えを尊重する時代でもありますから、昔と同じようにはいかないです。
ここでも少子高齢化が原因で団員不足に繋がってきているのですね。
団員の皆さんの働き方も変わってきているのでしょうか。
昔は自営業の人が多くて、昼間の火事にも対応しやすかったんです。今は会社勤めの人が多い。町の外で働いて、夜に帰ってくる人もいますから、日中に集まれる人数が少なくなっています。 例えば、ある分団に3人、別の分団に2人集まったとします。合わせれば5人いるのに、それぞれの分団で人数がそろうまで待つやり方では、どちらも出られない。そこを一緒にすれば出動できるんじゃないか、ということです。 無線で連絡を取り合って動けるようにするとか、分団の統合を考えるとか。これからの体制を見直す必要があります。

現在の分団の状況を教えてください。
以前は9個分団あり一昨年度、昨年度とそれぞれ一個分団ずつ休団となり現在は7個分団で活動しています。人が減ったこともありますが、それだけでなく、これまで団員へのケアが足りなかった面もあると思っています。昔からの体制で、上からの命令が多く、下の意見を十分に受け止められなかった。その反省もあります。もっと早く対応していれば、ここまでにはならなかったかもしれません。
年齢の面では、どのような課題がありますか。
定年の考え方も大きな課題です。これまで「この年齢まで」と思って続けてきた人に、さらに続けてほしいとお願いすれば、負担になりますよね。 人が足りないから年齢を延ばそう、というだけでは納得してもらえません。今いる人たちにどう説明して、どう話し合っていくか。そこが難しいところです。 地域によって事情も違います。消防車が来るまでに時間がかかる地域では、その前に自分たちで対応しなければならない。大きな災害で道路が崩れたら来られないかもしれない、という意識もある。そうした違いもありますね。
消防団を退団したあとも、関わり続ける方はいらっしゃるのですか。
消防団を経験した人が、機能別団員として地域を守ろうと参加してくれることもあります。そういう志のある方たちがいるんです。 その人たちにどこまで、どういう形で関わってもらうかも、これから考えていくことですね。
そうした方々の力も大切ですね。では、人手不足や高齢化に対して、どのような工夫をしていますか。
年齢が上がると、昔のように体が動かないということも出てきます。昔ながらの機材では大変なところを、新しい機材で補えないか、行政にお願いしています。 例えば、水を背負って消火するジェットシューターという機材があります。背中側に水を背負うものから、前後に水が入るベスト型のものにすると、体のバランスが取りやすいんです。そういうものを少しずつ入れてもらっています。 少ない人数でも扱える機材や、安全に使えるものを取り入れていきたいですね。

訓練や行事の負担についてはいかがでしょうか。
一人ひとりの負担は大きいです。「いつまで続けるんだろう」という気持ちになる人もいます。 半日ずつ別の日にやっていた行事を、1日にまとめてできないか。訓練も、必要な内容を組み合わせてできないか。そういう工夫で負担を減らしています。 ただ、基本的な動作などは安全管理のうえでは身につけておかなければなりません。一番心配なのは、けがですから。
なるほど、色々な工夫を取られているのですね。
安全のために特に大切にしていることを教えてください。
ホースを扱うときの姿勢や、消防車から降りるときの動作など、本当に基本的なことです。出動するときも、靴はきちんと履いているか、手袋はしているか、ヘルメットは着けているか。 火事だと焦ってしまいますが、まず自分の身を守らなければいけません。そのうえで活動することを伝えています。 装備も大事です。手袋ひとつでも、切れにくい、熱に強い、滑りにくいなど、新しいものには工夫があります。安全につながるものは取り入れていきたいと思っています。
団員の皆さんの待遇についても、見直しが必要だと感じていますか。
そうですね。活動を休止した分団のことを考えても、処遇や待遇、装備改善のおくれなどに、不満が積もっていた思いがあったのかもしれません。 活動にかかる費用への補助も含めて、もっと良くできないか。団員の士気が下がってしまわないように、行政と話し合っていきたいです。
これまでの仕組みで残したいことと、変えていきたいことは何ですか。
災害の現場では、命令系統は大切です。「それ以上前に行くな」という指示に従わなければ、けがや命に関わることもあります。そこはしっかりしていなければいけません。 普段の組織のあり方としては、団員の意見が挙がるようにしたいですね。いろいろな意見を聞いて改善しなければ、続けていけませんし、新しい人にも入ってもらえません。 意見を聞いたうえで、「そこはこうしてほしい」と理由を説明できる先輩も必要です。そういう組織にしていきたいです。
消防団に対するイメージも、昔とは変わってきていますか。
昔は、飲み会にも強制的に参加するようなことがありました。当時はそれが普通でも、今の感覚ではそうはいかないですよね。 今は、強制的な飲み会はほとんどなくなっています。コミュニケーションのために集まることはあると思いますが、昔のイメージとは違うんです。 若い人の考え方にも対応していかなければ、この組織は続かないと思っています。
実際に団員の声を受けて、見直したことはありますか。
花火大会の警備です。ずっと消防団が出ていたのですが、回数が多く、大きな負担だという声がありました。 費用が出ればいいという話でもないんです。「自分も子どもと花火を見たい」という人もいますから。 大会の規模や内容を踏まえて、消防団の警備が必要なのかという意見が出ました。関係する方たちと話をして、今年は消防団が警備に出ない形にしています。 ほかにも、地域の消防設備の管理について、消防団が担っている仕事を見直せないかと考えています。すぐに変えられることばかりではありませんが、負担を減らすために話をしています。
女性消防の皆さんは、どのようなことをしているのでしょうか。
防火のPRや、花火教室、防火教室などです。救命に関することを学んで、地域の人たちに伝えることもあります。 災害が起きたときの避難所でも、女性の目線で対応できることがあると思います。子どもや女性、高齢の方への対応など、男性だけでは気づきにくいこともありますから。 今は人数が少なくなっているので、女性にももっと入ってもらいたいですね。

子どもたちと関わる場面もあるんですね。
幼稚園や小学校などで、火の取り扱いや花火の扱いを教えることができます。自分の子どもが通う場所で、お母さんが教える側になることもある。 子どもにとって、お母さんがヒーローになりますよね。 ほかの地域の女性消防の人たちと交流すれば、「こんなことをやっているんだ」と知る機会にもなる。そういうつながりも広げていけると思います。

女性ならではの目線もとても大事ですよね。
学生が関わることも考えているのですか?
まだ構想の段階ですが、学生にも関わってもらえないかと思っています。救命に関する講習を受けたり、学んだことを地域で生かしたりできれば、本人にとってもプラスになるのではないかと。 学校とも、そういう話ができたらいいですね。 ただ、新しいことを始めることで、今いる団員の負担を増やしてしまってはいけない。そこも考えなければなりません。反対の意見も含めて聞きながら、どうしていくかを考えたいです。
消防団は、地域の人同士をつなぐ役割も担ってきたのでしょうか。
昔はお祭りも、消防団の人たちが中心になって動いていました。地域に根づいた組織で、地域の人も、どんな人がやっているかを知っていたんです。 今は、消防団と地域の関係が少し薄くなってきたようにも感じます。だから、団員一人ひとりを「地域のヒーロー」にできないかなと思っているんです。 「この人が地域を守ってくれているんだよ」と、知ってもらいたいですね。
地域の人に知ってもらうことが、団員の方々の力にもなりそうですね!
近所のおじちゃん、おばあちゃんが「頑張れよ」と声をかけてくれるだけでも違うと思います。 そういうつながりがあれば、本人の地域を大切に思う気持ちも、もっと強くなるんじゃないでしょうか。 頑張っている若い団員もいますから、そういう人たちにもぜひ話を聞いてもらいたいです。
団員として参加する以外にも、地域で支えられることはありますか。
仕事を持ちながら、火災があれば出動するわけですから、勤め先の理解も必要です。地域を守りたいという気持ちだけで、全部できるわけではありません。 地域の人たちに消防団のことを知ってもらうことも、力になると思います。関心を持ってくれる人が参加できる受け皿もつくっていきたいですね。
5年後、10年後、どのような消防団になっていてほしいですか。
サスティナブル(持続可能な)消防団にしたいです。そのためには、いろいろな意見を取り入れて、安全な機材を使い、今の人数や働き方に合った体制に変えていかなければなりません。 日中に人が集まらず、複数の分団が出動できないという状況もありますから、分団の統合も含めて考えています。今のままでは、10年、20年先にもっと厳しくなると思っています。 地域を守りたいという志のある人はいます。その人たちが関われる形をつくりたいんです。消防団は、地域を思う気持ちがなければ成り立たないですから。
ほかの地域の取り組みから学ぶこともあるのでしょうか。
あります。今年はほかの地域の消防団と交流して、いろいろ勉強させてもらいました。 自分たちの地域の中だけにいると、外のことがわからないんです。当たり前だと思っていたやり方も、ほかでは違うことがある。「これ、いいね」と思うことがたくさんありました。 ここはこのやり方だから、と決めてしまわず、いいところは取り入れていきたいですね
土屋さんのお話を聞き、地域の安全が多くの人の支えによって守られていることを改めて感じました。人手不足や高齢化などの課題もありますが、これからも地域全体で消防について考えていくことが大切だと思いました。
今回は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。